愛産婦人科
LINE
Instagram
愛産婦人科
【医師監修】切迫流産・切迫早産とは?原因や兆候、安静生活の過ごし方を解説

【医師監修】切迫流産・切迫早産とは?原因や兆候、安静生活の過ごし方を解説

2025/10/26(Sun)

【医師監修】切迫流産・切迫早産とは?原因や兆候、安静生活の過ごし方を解説

妊娠中に「切迫流産」や「切迫早産」と診断されると、「赤ちゃんは大丈夫だろうか」「これからどうなってしまうのだろう」と、とても不安になりますよね。 しかし、これらは「今すぐ流産・早産になる」というわけではなく、赤ちゃんからの「少し休んでね」というサインです。 この記事では、切迫流産・切迫早産の正しい知識と、診断された後の具体的な過ごし方、そして不安な気持ちとの向き合い方について、産婦人科医が詳しく解説します。正しい情報を知ることで、前向きに治療に取り組む一歩にしましょう。

まずは知っておきたい「切迫流産」と「切迫早産」の違い

この2つの最も大きな違いは「起こる時期」です。

項目

切迫流産

切迫早産

時期

妊娠22週未満

妊娠22週以降37週未満

状態

流産(妊娠の継続が難しいこと)になりかけている状態

早産(週数より早く生まれること)になりかけている状態

どちらも、適切な対処や治療によって、無事に出産まで妊娠を継続できる可能性は十分にあります。

切迫流産とは?(~妊娠22週未満)

妊娠22週未満に、出血やお腹の張りといった流産の兆候が見られる状態です。

妊娠初期(~12週未満)の流産の多くは、赤ちゃんの染色体異常が原因とされ、残念ながら妊娠の継続が難しいケースも少なくありません。しかし、「切迫流産=必ず流産する」わけではありません。 安静にすることで、症状が落ち着き、妊娠を続けられることも多くあります。

切迫早産とは?(妊娠22週~37週未満)

妊娠22週以降37週未満の「早産」になりかけている状態です。

お腹の張りが頻繁に起きたり、出血が見られたりします。適切な治療で出産時期をできるだけ遅らせることが、赤ちゃんの健やかな成長にとって非常に重要になります。早く気づき、早く対処を始めることが大切です。

これって大丈夫?切迫流産・切迫早産の主な兆候(サイン)

以下のような症状に気づいたら、自己判断せず、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。

  • 性器出血

    茶色やピンク色のおりものから、鮮血まで様々です。少量でも出血があれば、まずは病院へ連絡しましょう。

  • お腹の張り・痛み

    お腹がキューっと硬くなる、生理痛のような鈍い痛みが続く、腰が重いといった症状です。痛みが規則的に来る場合は特に注意が必要です。

  • 水っぽいおりもの

    サラサラとした水のようなおりものが続く場合、「破水」の可能性があります。すぐに病院への連絡が必要です。

中には自覚症状がほとんどなく、妊婦健診で子宮頸管が短くなっていることを指摘されて初めてわかるケースもあります。定期的な妊婦健診が、早期発見の鍵となります。

なぜ起こるの?主な原因について

切迫流産・切迫早産の背景には、以下のような様々な要因が考えられます。

赤ちゃん側の要因:染色体異常(主に妊娠初期の流産)

お母さん側の要因

  ・子宮頸管無力症(子宮の出口が開きやすい体質)

  ・絨毛膜羊膜炎(細菌感染による子宮内の炎症)

  ・子宮筋腫や子宮の形態異常

  ・多胎妊娠(双子など)による子宮への負担

  ・妊娠高血圧症候群などの合併症

過度なストレスや体の冷えが影響することもありますが、多くの場合は複合的な要因が絡み合っています。「私のせいだ」とご自身を責める必要は全くありません。

診断されたらどう過ごす?日常生活での注意点

医師から「切迫流産」「切迫早産」と診断されたら、基本は「安静」です。子宮への刺激や負担を減らし、お腹の張りを引き起こさないようにすることが治療の第一歩となります。

「自宅安静」のレベルは人それぞれ

安静の程度は、症状によって「家事はOK」「トイレ・食事・お風呂以外は横になる」「入院が必要」など様々です。どの程度の安静が必要なのか、必ず医師に確認しましょう。

心がけたいこと

  • できるだけ楽な姿勢をとるようにする
  • 栄養バランスの良い食事を摂る
  • 体を冷やさないように温かくする
  • 定期的な妊婦健診を必ず受ける

避けたいこと

  • 仕事、家事など、体に負担のかかる活動
  • お腹に力を入れる動作
  • 長時間の立ち仕事や車の運転
  • 性行為

すぐに病院へ連絡すべきタイミング

安静にしていても、以下のような症状が現れたり、強くなったりした場合は、診療時間外や夜間・休日でもためらわずに、すぐにかかりつけの病院へ連絡してください。

  • 出血の量が増えた、鮮血に変わった
  • お腹の張りが規則的になった(1時間に5〜6回以上など)
  • 痛みがどんどん強くなる
  • 破水が疑われるとき
  • 胎動が急に弱くなった、感じられなくなった

どのような治療を行うの?

症状や妊娠週数に応じて、以下のような治療を組み合わせて行います。

  • 安静療法:自宅または入院して、ベッドの上で過ごします。
  • 薬物療法:お腹の張りを抑える「子宮収縮抑制剤(張り止め)」の内服や点滴、感染予防のための抗生剤などを使用します。
  • 手術:子宮頸管無力症の場合、子宮の出口を縛る「子宮頸管縫縮術」を行うことがあります。

仕事や上の子のお世話は?よくあるご質問(FAQ)

Q. 仕事は休まないといけませんか?診断書はもらえますか?

A. 安静が必要ですので、基本的にはお休みいただくことになります。母性健康管理指導事項連絡カードや診断書が発行され、傷病手当金の申請の対象になります。

Q. 上の子がいます。どうやって安静にすればいいですか?

A. 最も悩ましい問題だと思います。パートナーやご両親、地域のファミリーサポートなどを最大限に活用し、ママが休める環境を作ることが何より大切です。抱っこは避けるよう指導されることが多いかと思いますが、抱っこをしないことで上のお子さんが長時間ぐずることもあるでしょう。それはそれでママには負担になります。上のお子さんもママと触れ合いたいのです。長時間の抱っこでなければ構いません。上のお子さんを甘えさせてあげてください。

Q. ストレスも原因になりますか?

A. 直接的な原因とは言えませんが、強いストレスは血流を悪化させ、お腹の張りを誘発する可能性があります。ストレスを溜め込まないよう、安静にしながらできる趣味を見つけたりして、心を穏やかに保つ工夫も大切です。

まとめ

  • 切迫流産は妊娠22週未満、切迫早産は妊娠22週以降37週未満に起こる、流産・早産の危険がある状態です。
  • 主なサインは出血、お腹の張りや痛みです。気づいたらすぐに相談しましょう。
  • 原因は様々で、ご自身のせいではありません
  • 治療の基本は「安静」。医師の指示に従い、無理をしないことが大切です。
  • 強い症状がある場合は、夜間や休日でもためらわずに病院へ連絡してください。

妊娠中の体と心はとても繊細です。不安な気持ちを一人で抱え込まず、私たちを頼ってください。赤ちゃんとあなた自身を守るために、一緒に乗り越えていきましょう。

【監修】

医療法人育愛会 愛産婦人科

院長 菅原 正樹

札幌市手稲区の産婦人科 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長の菅原です。 私たちは、女性のあらゆるライフステージに寄り添い、一人ひとりのお悩みに応える医療を大切にしています。妊娠中の心配ごとや出産に関するお悩みなど、どうぞお気軽にご相談ください。