
【助産師監修】妊娠中の体重管理「増えすぎ」も「増えない」もNG?安産のための正しい考え方と食事のコツ
妊婦健診の日が近づくと、「体重、増えていないかな…」とドキドキしてしまう。 そんな妊婦さんは少なくありません。 「体重が増えすぎるとお産が大変になる」とはよく聞きますが、実は「増えなさすぎ」も赤ちゃんにとってリスクがあることをご存知でしょうか? かつては「厳しく体重を制限する(小さく産む)」という考え方が主流だった時代もありましたが、現在は「お母さんの体格に合わせて、適切に増やす」ことが推奨されています。 この記事では、今のあなたにとって大切な「体重管理の正しい考え方」と、ストレスを溜めずにコントロールするための食事のコツについて、医師が解説します。
理想の増加量は「人それぞれ」違います
「妊娠したら〇〇kgまで増やしていい」という一律の決まりはありません。
妊娠前の体格(やせ型、ふつう、肥満気味など)によって、目指すべき体重のゴールは一人ひとり異なるからです。
妊娠前の「BMI」が基準になります
体重管理の目標を立てる際は、妊娠前の「BMI(体格指数)」を基準にします。
あなたにとって最適な体重増加量は、母子手帳や妊婦健診の際に医師・助産師からアドバイスがあります。妊娠初期の段階で、妊娠後期までのゴールを知っておくことで、これからの見通しが立ち、ペース配分を考えながら過ごすことができます。
「体重が増えること」自体は自然なこと
「太るのが怖い」と思うかもしれませんが、妊娠中に体重が増えるのは、赤ちゃんが育っている証拠でもあります。
- 赤ちゃんの重さ
- 胎盤
- 羊水
- 増える血液や水分
- 乳房の発達
これらを合わせると、お母さん自身の脂肪が増えなくても、体重は自然と増加します。必要な増加まで無理に抑えようとせず、赤ちゃんとご自身の体のために栄養を摂ることが大切です。
なぜ管理が必要なの?「増えすぎ」と「不足」のリスク
体重管理が必要なのは、単に「お産が大変になるから」だけではありません。お母さんと赤ちゃんの健康を守るための明確な理由があります。
「増えすぎ」のリスク
急激に体重が増えすぎると、以下のようなトラブルのリスクが高まります。
- 妊娠高血圧症候群:高血圧になり、母子ともに危険な状態になる可能性があります。
- 妊娠糖尿病:巨大児(赤ちゃんが大きくなりすぎる)の原因となり、難産になりやすくなります。
- 微弱陣痛・帝王切開:産道に脂肪がつくと赤ちゃんが通りにくくなり、お産が長引くことがあります。
「増えなさすぎ」のリスク
一方で、体重を気にして食事を制限しすぎることも危険です。
- 低出生体重児(小さく生まれる):発育に影響が出る可能性があります。
- 赤ちゃんの将来の生活習慣病リスク:お腹の中で十分な栄養をもらえなかった赤ちゃんは、飢餓状態に備えてエネルギーを溜め込みやすい体質になり、将来、肥満や糖尿病になりやすくなるという研究結果があります。
「小さく産んで大きく育てる」は昔の話。 今は「適正に増やして、元気に産む」がスタンダードです。
無理なく続ける!食事のコツ5選
体重管理といっても、ただ「食べる量を減らす」のはNGです。必要な栄養は摂りつつ、カロリーをコントロールする工夫をしましょう。
- 「和食」を中心にする
パスタやパンなどの洋食は、どうしても脂質や糖質が高くなりがちです。ご飯、味噌汁、焼き魚、お浸しといった「一汁三菜」の和食なら、自然と栄養バランスが整い、カロリーも抑えられます。ただし、同じ和食でも丼もの(カツ丼や親子丼など)には注意が必要です。ご飯の量が多くなり、野菜不足になりやすいため、できるだけおかずとご飯が分かれた「定食スタイル」を選びましょう。 - 食べる順番は「ベジ・ファースト」
食事の際、最初に野菜(食物繊維)や汁物から食べ始めましょう。血糖値の急激な上昇を抑えられ、太りにくくなる上に、満腹感も得やすくなります。 - 薄味を心がける(塩分を控える)
味が濃いと、どうしてもご飯が進んでしまいます。また、塩分の摂りすぎは「むくみ」の大敵。出汁や酸味(レモンやお酢)を活用して、薄味でも満足できる工夫をしましょう。 - 「おやつ」は質を変える
甘いものが食べたくなったら、ケーキやスナック菓子の代わりに、ヨーグルト、果物、小魚アーモンド、小さいおにぎりなどを選びましょう。不足しがちなカルシウムやビタミンを補えます。
1日単位ではなく「1週間単位」で調整する
「今日は食べ放題に行ってしまった…」と落ち込む必要はありません。翌日と翌々日で少し控えめにして、1週間で帳尻を合わせれば大丈夫です。ストレスを溜めないことが一番です。

まとめ
- 今の体重管理は、厳しく制限するのではなく「お母さんの体格に合わせて適切に増やす」ことが大切です。
- 増えすぎは難産や高血圧のリスクになりますが、増えなさすぎも赤ちゃんの将来の健康に影響します。
- 適切な増加目標は人によって異なります。健診の際に必ず確認しましょう。
- 「和食・薄味・野菜から」を意識して、質を重視した食事を心がけましょう。
体重管理は、元気な赤ちゃんに会うための大切な準備ですが、あまり神経質になりすぎる必要はありません。
「うまくいかないな」「どう食事を変えたらいいの?」と悩んだときは、健診の際に医師や助産師にご相談ください。一緒に無理のないプランを考えていきましょう。
【監修】
医療法人育愛会 愛産婦人科
院長 菅原 正樹
札幌市手稲区の産婦人科 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長の菅原です。 私たちは、女性のあらゆるライフステージに寄り添い、一人ひとりのお悩みに応える医療を大切にしています。体重のこと、食事のことなど、健診の際にお気軽にご相談ください。





