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【医師解説】自費でも打つ価値はある?大人のHPVワクチン(子宮頸がん予防)の効果と、検診の重要性

【医師解説】自費でも打つ価値はある?大人のHPVワクチン(子宮頸がん予防)の効果と、検診の重要性

2025/12/12(Fri)

【医師解説】自費でも打つ価値はある?大人のHPVワクチン(子宮頸がん予防)の効果と、検診の重要性

日本では、毎年約1万人の女性が新たに「子宮頸(しきゅうけい)がん」と診断されています。 特に20代〜30代の子育て・働き盛り世代で急増しており、“マザーキラー”とも呼ばれる悲しい病気です。 2025年3月末をもって、特例のキャッチアップ接種(無料)期間は終了しました。 そのため、接種のタイミングを逃してしまった方からは 「今から自費で打っても意味はある?」 「高額な費用をかける価値はあるの?」 といったご相談をいただきます。 結論から申し上げますと、大人になってからでもHPVワクチンを接種する価値は十分にあります。 この記事では、性交渉経験のある大人の女性がワクチンを打つメリットや効果、そしてワクチンと同じくらい大切な検診について、産婦人科医師が詳しく解説します。

そもそも「子宮頸がん」はなぜなるの?

子宮頸がんの95%以上は、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が原因です。 このウイルスは特殊なものではなく、性交渉の経験がある女性なら生涯で約80%の方が一度は感染すると言われるほど、ごくありふれたものです。

通常は免疫の力で自然に排除されますが、排除されずに感染が長期間続くと、一部が“前がん病変”を経て、数年〜数十年かけて子宮頸がんへと進行します。

「自費でも打つ価値はある?」大人が接種する3つのメリット

公費(無料)期間が終わり、現在は全額自己負担(自費)での接種となります。決して安くはない費用がかかりますが、それでも医師として接種をお勧めするのには、明確な理由があります。

1. 「まだ感染していない型」を防ぐことができる

HPVにはいくつもの種類(型)があります。 すでに性交渉の経験があり、いくつかのHPVに感染していたとしても、すべての型に感染していることは稀です。 現在主流の9価ワクチン(シルガード9)は、9種類の主要なHPV型の感染を防ぎます。ワクチンを打つことで、まだ感染していない他の型からの攻撃をブロックし、リスクを下げることができます。

2. 「再感染」を防ぐ効果が期待できる

HPVは一度感染して自然に排除されたとしても、何度でも感染する可能性があります(風邪と同じです)。 ワクチンを接種して体の中に抗体(ウイルスと戦う武器)を作っておくことで、ウイルスの再侵入・再感染を防ぐ効果が期待できます。

3. パートナーが変わる可能性や、長い未来のために

人生は長く、ライフスタイルやパートナーが変わる可能性は誰にでもあります。 ご自身が何歳であっても、「これからの未来」のリスクを最小限にするために、ワクチンは非常に有効な手段です。

海外では45歳くらいまでの接種が推奨されている国もあり、大人になってからの接種も一般的です。

気になる費用と回数は?

現在、自費診療で接種する場合の目安は以下の通りです。 

※医療機関によって料金は異なります

  • ワクチンの種類:9価ワクチン(シルガード9)
  • 接種回数:合計3回(初回、2ヶ月後、6ヶ月後)
  • 費用の目安:1回あたり約3万円前後(3回合計で約9万〜10万円)

約10万円という金額は、決して小さな出費ではありません。 しかし、万が一子宮頸がんになった場合の治療費、通院のための休職、そして何より失われるかもしれない「子宮」や「健康な日常」と比較したとき、“未来の自分への投資”として、その価値は十分にあると言えるのではないでしょうか。

ワクチンだけでは不十分?「検診」が不可欠な理由

「高いお金を払ってワクチンを打ったから、もう安心!」 そう思われるかもしれませんが、実はワクチンだけでは子宮頸がんを100%防ぐことはできません。

ワクチンはあくまで「新たな感染を防ぐ」ものであり、すでに感染しているウイルスを消したり、すでにできている病変を治したりする効果はないからです。

だからこそ、「子宮頸がん検診」との併用が最強の予防法になります。

  • ワクチン:ウイルスの侵入をブロックする(一次予防)
  • 検診:がんになる前の「前がん病変」の段階で見つける(二次予防)

この2つのバリアを張ることで、子宮頸がんは「ほぼ確実に防げる病気」になります。20歳を過ぎたら、ワクチン接種の有無に関わらず、2年に1回は必ず検診を受けましょう。

副反応(副作用)について

接種部位の痛みや腫れ(はれ)が主な副反応です。数日で自然に治まります。 また、接種の緊張や痛みで迷走神経反射(立ちくらみ)が起こることがありますが、しばらく横になって休めば回復します。 世界中のデータから、ワクチンの安全性と有効性は確立されています。過度に恐れる必要はありません。

まとめ

  • キャッチアップ接種(無料)終了後も、大人が自費で接種する価値は十分にあります。
  • 未感染のHPV型への防御や、再感染の予防など、メリットは大きいです。
  • 費用は3回で約10万円前後かかりますが、将来のがんリスクを下げる「投資」と言えます。
  • ワクチン接種後も、2年に1回の「子宮頸がん検診」は必須です。

「自分の年齢でも意味がある?」「接種スケジュールはどうなる?」など、迷われている方は、ぜひ一度診察室でご相談ください。 あなたの大切な体と未来を守るために、最適な選択を一緒に考えましょう。

【監修】 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長 菅原 正樹

札幌市手稲区の産婦人科 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長の菅原です。 私たちは、女性のあらゆるライフステージに寄り添い、一人ひとりのお悩みに応える医療を大切にしています。ワクチンのこと、検診のことなど、どうぞお気軽にご相談ください。