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【産婦人科医解説】無痛分娩は「全く痛くない」わけじゃない?「和痛」との違いと、痛みを残すための大切な理由

【産婦人科医解説】無痛分娩は「全く痛くない」わけじゃない?「和痛」との違いと、痛みを残すための大切な理由

2026/08/20(Thu)

【産婦人科医解説】無痛分娩は「全く痛くない」わけじゃない?「和痛」との違いと、痛みを残すための大切な理由

お産が近づくにつれて、「陣痛の痛み」への恐怖や不安が大きくなるのは当然のことです。近年、心と体にゆとりを持ってお産に臨むための選択肢として「無痛分娩」を希望するプレママが増えています。 しかし、助産師として妊婦さんとお話ししていると、「無痛分娩=全く無痛で赤ちゃんが生まれる」とイメージされている方が少なくありません。実は、無痛分娩であっても「痛みがゼロになるわけではない」のです。 今回は、無痛分娩と和痛分娩の違いや、なぜあえて少しの痛み(感覚)を残すのか、その大切な理由について産婦人科医が分かりやすく解説します。

1. 「無痛分娩」と「和痛分娩」は何が違うの?

産院のホームページなどで無痛分娩和痛分娩という言葉を目にして、違いが分からず戸惑う方も多いと思います。

厳密な医学的定義があるわけではありませんが、一般的には以下のように区別されることが多いです。

  • 無痛分娩: 主に硬膜外麻酔(背中から細いチューブを入れて麻酔薬を注入する方法)を使い、下半身の痛みをしっかりブロックする方法です。
  • 和痛分娩: 点滴による鎮痛薬などを使って痛みを和らげる方法です。産院によっては、麻酔薬の量を少なめにした硬膜外麻酔を和痛分娩と呼ぶこともあります。

実は、日本で行われている無痛分娩のほとんどは、痛みを完全に取り去るのではなく、痛みをコントロールして和らげる和痛(痛みを伴う無痛分娩)の形をとっています。

2. どうして「痛みゼロ」にしないの?

「せっかく麻酔をするなら、全く痛くないようにしてほしい!」と思うかもしれません。

しかし、麻酔の量を限界まで増やして痛みを完全にゼロにしてしまうと、痛みだけでなく、足の感覚や筋肉を動かす力(運動神経)まで完全に麻痺してしまいます。

お産は、ママ自身のいきむ力が必要です。そのため、無痛分娩では麻酔の量を細かく調整し、想像絶するレベル10の痛みを、我慢できるレベル2〜3程度に抑えることを目標にしています。 痛みというよりはお腹がキューっと張っている感覚赤ちゃんが骨盤に下りてきて押されるような圧迫感として感じることが多いです。

3. あえて痛み(感覚)を残す3つの大切な理由

少しの痛みや感覚を残しておくことには、安全でスムーズなお産のための重要な理由があります。

  • ① 陣痛の波(タイミング)を自分で感じるため

    お産の終盤、赤ちゃんを押し出すためには、陣痛の波に合わせてタイミングよくいきむ必要があります。お腹が張る感覚が残っていることで、「あ、今から波が来るな」と自分でタイミングを掴むことができます。

  • ② 上手にお産を進めるいきむ力を残すため

    感覚が完全になくなってしまうと、どこにどう力を入れていいか分からなくなってしまいます。しっかりといきむことができないと、お産が長引いたり、吸引分娩(機械で赤ちゃんを引っ張る方法)になる確率が高くなります。

  • ③ 赤ちゃんが生まれてくる感覚を味わうため

    下半身の感覚が残っていることで、「赤ちゃんが今、産道を通ってきている」「あ、今頭が出た!」という命誕生のリアルな感覚をしっかり味わうことができます。これが産後の達成感や、赤ちゃんへの愛情のふくらみに繋がるとおっしゃるママも多いです。

まとめ:無痛分娩は、落ち着いてお産に向き合える前向きな選択です

痛みを我慢してこそお産という古い考えにとらわれる必要は全くありません。 無痛分娩(和痛分娩)最大のメリットは、パニックになるほどの痛みが取り除かれることで、ママがリラックスし、冷静に助産師の声を聞きながら、赤ちゃんにしっかり酸素を届けてあげられることです。

「痛みに弱くて不安」「産後の体力を少しでも温存したい」という方は、一人で悩まず、妊婦健診の際に遠慮なくご相談ください。ママが心から安心して赤ちゃんを迎えられるよう、私たちスタッフが全力でサポートします!